仕事の中に爽やかさや痛快さ、気概を感じさせる「直江状」
直江兼続
- 氏名
- 直江山城守兼続
- 立場
- 上杉景勝の代に越後から会津に移った名門上杉家の家老
- 主な評価
- 学問を愛し、忠義に厚い人物
- 頭の回転・切り替えが早い
- やるべき事に全力を尽くして実行する男
◆ 有名な出来事・人物背景 ◆
- 妻であるお船の方を深く愛し、生涯一穴主義を貫く
- 「愛」という字を前立にあしらった兜をかぶっていたが、下人を無礼打ちにした自分の部下に関する訴訟では、「生きて返らせろ」としつこい遺族達に閻魔大王への嘆願書を持たせて首をはね、愛だけに生きる優男ではない事を証明
- 朝鮮の役に従軍した際に踏みにじられる書物を憂い保全収集活動を展開
◆ 「直江状」 −家康に歴史に残る挑戦状を送りつける− ◆
直江状を受け取った徳川家康は激怒して上杉討伐軍を編成して会津に向かい、その留守に石田三成が挙兵しました。その後は誰もが知っている結末です。
後世の勝手な想像かもしれませんが、「三成と兼続の計画的行動説。それを知った上であえて乗った家康説」を採ります。
- 人となりを愛して並の大名以上の立場に引き立ててくれた豊臣秀吉への恩
- 気が会う仲間としての石田三成への情
- 約束を簡単に破る徳川家康への怒りと男の挑戦心
- 軍神上杉謙信の薫陶を受けた者としての気概
これらもってして、徳川家康からの言いがかりに対して 「直江状」 をしたためて発送。
- 「訳が分からない噂はいつの世でもあるものです」(作ろうと思えばどんな噂でも作りだせます)
- 「主君景勝の律儀さは世間に知れ渡っています。朝令暮改を繰り返す世間の方々こそがおかしいのではないでしょうか?」(特にあなたです)
- 「誓紙を出せと仰るが今まで出してきたものはどうなったのでしょうか?どうせ守られない約束なら全くの無駄な行為でしょう」(死に際の豊臣秀吉への約束はどうなったのでしょう)
- 「加賀の前田は母親を人質に差し出したようですね。徳川の威光はさすがですね」(上杉は違います)
- 「武器を集めるのは当然です。田舎者の私達には茶道具などの人たらしの道具は不要です」(戦いの準備をしていますよ。そもそも武士が武士たろうとして何が問題なのでしょう)
- 「戦いを準備する者が他国への道の整備をしますか?そんな事をすれば攻め易くなるではありませんか」(領土内に踏み込ませるつもりはありませんが)
- 「景勝が正しいかあなたが正しいか世間が判断してくれます。こちらからは手を出すつもりはありません。末代までの恥となりますから」(やろうというならお相手致します。どうぞ会津まで出向いて下さい)
何とか家康を会津に引きつけ、その隙に三成が西で挙兵して西をがっちり押さえる。
会津では地の利を活かした防衛作戦を展開し、家康軍からの離脱者が続出する事を待つ。大阪城と秀頼を抱える西方には大義名分があり、豊臣恩顧の大名達は西方に付くだろう・・・・。
作戦は何はなくとも家康を会津におびき寄せないと始まりせん。
家康を散々に愚弄して怒らせ、家康が上方を留守にする理由を作らないといけません。
敵である家康の思惑とも一致しておびき寄せは成功しますが、三成の挙兵が早すぎました。豊臣恩顧の大名達の三成嫌いも予想以上でした。
◆ 直江兼続の仕事のやり方、取り組み方◆
戦国に生きた武将の仕事は生き死にに直結します。たった一つに決断の差によって、自分のみならず家族や部下達の生き死にが決まります。
仕事をするに当たっての覚悟は現代人が想像できないレベルであった事でしょう。
直江兼続も一流の覚悟を持っていました。(開き直って取り組むスタイル)
いくら綿密な計画を立てたところでその場において臨機応変に対応する事が全てである事も知っていました。
ただ、勝つ可能性を高めるためには計画・計略が必要な事を熟知し、軍備・国内を整備し、仲間を募り、浪人を召抱え、情報を収集しました。
上杉の正当性と家康の節操のなさを余すことなく表現した直江状は、計画を目論み通りに遂行するための1つのステップでした。(将来を見据えて計画するスタイル)
その直江状の中では、様々な思いを表現しています。
家康や周囲が読み上げた際の開いた口がふさがらない状態を想像して楽しみながら書き上げたことでしょう。(仕事を楽しむスタイル)
世間が恐れる家康、世間を騙す家康に対し、謙信の血を引く自分達が立ち向かわなくて誰ができるのかといった気概や自負心を見せています。(信じるものにこだわり貫く流儀)
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